コレステロールと聞くと眉をひそめる人が多いかもしれません。
メディアや健康診断でも高コレステロールの弊害がよく取り上げられます。 「コレステロールを減らす」と銘打った健康食品も多くみかけるようになりましたよね。
「悪玉コレステロール、善玉コレステロール」・「心臓病にはコレステロールは大敵」・「脂肪だから太る」
たしかにそういった点もあることはたしかですが、健康や肥満改善のためにコレステロールを避けた食事は、健康のレベルも落とすことも否めません。
人間の体内にあるコレステロールを100%とすると、そのうち80%は肝臓が栄養素を合成して作り出し、残りの20%がコレステロールを含む食物を摂ることによって補充されています。 以前のblogでも話ましたが、コレステロールが豊富に含まれると言われている卵を1日に1ダース、1週間続けて食べても血中のコレステロール値にほとんど変化は見られませんでした。
これはまさに食べ物のコレステロールを避けることが重要ではないということを示す話だと思いませんか?
コレステロールは悪者ではない!?
誤解しないでもらいたいのですが、元来コレステロールそのものはまったく悪者ではありません。 生命活動に重要な役割を持ち、健康を維持するためには欠かせない脂質です。
コレステロールの構造は、直鎖状には並んでいない丸々とした脂肪酸(C=27、H=46、O=1)ですが、一体どんな働きをしているのでしょう!?
まずコレステロールは、同じ脂質の仲間であるリン脂質とともに細胞膜を構成し、細胞内外に様々な物質が出入りするのを調節します。また脳や神経の細胞膜にも大量に存在しており、神経伝達に重要な役割を果たしていると考えられています。
次に、性に関係するテストステロンやエストロゲン、糖質代謝を助けるコルチゾン、細胞内外の水分調節にかかわるアルドステロンなどのホルモンの唯一の材料として使われます。 また一部のコレステロールは、肝臓内で胆汁につくりかえられ、小腸内で脂肪を乳化して消化・吸収しやすくしたり、脂溶性ビタミンA、D、E、Kなどの吸収に大切な働きをします。
詳しくみていくと・・・
〇細胞膜の構成要素になる
コレステロールは主に細胞膜に存在し、大体2/3位が体内で合成され、残りが食物由来です。細胞膜の状態を健全に保つには、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、そしてコレステロールのバランスが重要。60兆個もある細胞の膜になっているわけですからコレステロールが重要なことがよくわかりますね。またコレステロールをしっかりとることは、中で働くDHA等にとっても大切です。
〇ホルモン(ステロイドホルモンなど)の生理活性物質に変換される。
様々なホルモンの材料になっています。たとえば、精子の製造、少なくなると鬱やガン、寿命が短縮してしまうと言われる「男性ホルモン(アンドロゲン)」、思春期以降に急激に増え始め、胸が大きくなる、月経が始まるなど、女性らしくなるために欠かせない脂質である「女性ホルモン(エストロゲン)」、月経の周期決定や妊娠の準備維持などに大切な「プロゲステロン(黄体ホルモン)」などなど。
〇消化に重要な胆汁酸の材料になる。 胆汁酸は食物脂肪を吸収しやすくしてくれます。足りないと脂がうまく消化できなくなってきます。
〇ビタミンDの前駆体になる ビタミンDは、このblogでも何度も登場していますが、カルシウムやリンの吸収を助けてくれるものです。皮膚のコレステロールがビタミンD前駆体(プロビタミンD3)となり、紫外線によってビタミンD3へと変換されます。このビタミンD3がカルシウムの吸収を促進してくれるのです。その他ビタミンDは、免疫など身体にとってさまざまな働きをしています。
〇脳内脂質の20~30%を占めている 脳の構成成分に占める脂の量は本当に多し。脂質が60%を占め、残りの40%はたんぱく質。そして脂質60%の中身は、コレステロール約50%、リン脂質約25%、DHAが25%です。
〇神経伝達に重要な役割を持っている コレステロールがあるほど神経伝達が早くなります。
これについてはちょっと詳しく話しましょう。
脳の中にもコレステロールがたくさんあるのですが、コレステロールは、電気のコードが電線の回りを絶縁体でくるんでいるように神経細胞を外側から巻いて守っています(髄鞘またはミエリン鞘)。
この髄鞘が多いほど神経伝達が早いと言われているので、脳の神経伝達機能の発達には、神経細胞内の
コレステロールが非常に重要なのです。
カリフォルニア大学の神経学教授ポール・トンプソンさんは、新型の脳スキャナ装置を使って、人間の知性が、脳の神経線維である軸索(脳の至るところにシグナルを送る配線)の質に強く影響を受けることを明らかにしています。
コレステロールでできている髄鞘(ミエリン鞘)は、この軸索を覆うことで脳内のシグナル送信を高速にする機能があり、髄鞘が厚ければ厚いほど、神経インパルスは早くなります。
このことから、知能指数が高い人は、脳の髄鞘が厚いということがわかりますよね。
脳においては、空間認識能力や視覚処理及び論理を掌る「頭頂葉」と、左右の大脳皮質の間で情報をやり取りする経路である「脳梁」が、知性に深く関わっているのですが、これらの領域における髄鞘の質は、理論的推理力と知性全般を見る試験のスコアと相関していたといいます。
少し難しい話になりましたが、脳のコレステロールが神経伝達にとって非常に重要だということがわかりましたでしょうか?
ちなみにリン脂質やDHAは神経伝達物質に使われていますが、特に高度不飽和脂肪酸であるDHAはとても酸化しやすく、コレステロールは神経の回りをしっかりガードして、DHAが働きやすくなるような環境も作っていると言えます。
近年では、脂質ラフトと呼ばれるコレステロール含有率の高い生体膜の微細構造が、情報伝達や神経伝達に関与することが報告されています。 このように、神経伝達という脳の生理機能が発達するためには、神経細胞内のコレステロールの増加が重要なステップになるとされていて、コレステロールの状態が、
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン氏病、鬱
といった病態脳にみられる改善にも大きく関わってくると言われているのです。
どうですか?脳にとって重要なコレステロール^^。
さて、ごく最近の研究では脳神経細胞膜内のコレステロール量が増加すると、アルツハイマー病になるリスクが高まるとの発表もあったので、それも少し話しておきましょう。
これは過剰なコレステロールがあると、細胞膜のアミロイド蛋白が変性してアミロイドβ蛋白が蓄積してしまいアルツハイマーにつながってしまうとのことらしいのですが、アルツハイマーの特徴は
脳の委縮です。アミロイドβ蛋白が増えると、急速に脳を硬化してしまうそう。
この研究は、コレステロールが過剰にあり過ぎても良くないと言う話・・・。
たしかに以前から、アルツハイマー病の患者さんの脳の病変部から、酸化し異常に固まったコレステロールが大量に発見されていたりします。これらは抗酸化物質が少なくなっていることや代謝異常が起きているからだと思いますが、いずれにしろ酸化してしまった脂質は良くないですね。
私が思うに、脳の神経細胞内においてコレステロールは重要な役割を果たしているのは間違いないのですが、コレステロールが少なくなりすぎても脳の神経伝達に支障をきたし、脳の病気につながるということ、そして過剰になりすぎても細胞膜のアミロイドβ蛋白が蓄積してしまいアルツハイマーにつながってしまうとのことなのだと思います。
アルツハイマーやパーキンソン病の人は、必須脂肪酸とコレステロールをうまくコントロールしていくとかなり改善してくるといいます。 脂質のテーマの最初にお話しましたが、必須脂肪酸とコレステロールの状態は本当に大事ですね^^。
善玉コレステロールと悪玉コレステロールの話
さて、先に脳内のコレステロールを見てきましたが、次にそれ以外の場所でのコレステロールについても見ていきましょう。
まずは、コレステロールの体内分布を。
脳神経系 32.2g 結合組織・脂肪組織・組織液 31.3g 筋肉 30.0g 心臓・肺・腎臓 30.0g 皮膚 16.0g 血中 10.5g 骨髄 7.5g 肝臓 5.1g 消化管 3.8g
こうみていくと、脳と筋肉に約30%、臓器や結合組織などに30%、そしてその他の組織に30%と言ったところでしょうか。そして善玉とか悪玉とか騒いでいるのは、この血中のコレステロールのことを言っています。
ちなみに血液と脂肪は「水と油」の関係なので、そのままではコレステロールは血液に溶け込みません。そこでタンパク質と結合させて血液中に運ぶことになります。これをリポタンパク質と言います。 リポタンパク質は、いわばコレステロールなどの水に溶けない脂質を臓器から臓器へと運ぶ
「運び屋」と言えるでしょう。
リポタンパク質にはいくつか種類がありますが、特に大切なものにLDLとHDLがあります。 LDLはいわゆる悪玉、そしてHDLは善玉と呼ばれていますね。
体内に運ばれたLDLは、細胞の表面に到着すると、LDL受容体から細胞内に入り込みます。
細胞内で分解され、そのまま細胞膜に組み込まれて使われたり、細胞内で蓄えられたりします。そして、細胞で使用済となったコレステロールは細胞膜の表面に出ていきます。
一方、HDLは、LDLのように細胞内に入れません。そこで血液中を再び移動していくのですが、そのときHDLは使用済みとなったコレステロールを回収しながら再び肝臓に戻るわけです。 つまりHDLもLDLも私たちの身体には必要なもので、この2つがバランスを保っていることが大変重要なのですね。
よく言われる動脈硬化の原因となるのが、HDL(善玉)が減り、LDL(悪玉)が過剰にある状態。
この状態にあると、過剰になったLDLは、回収されず血管壁にくっついて溜まりやすくなります。くっついたまま放置しておくと、やがて酸化してしまいます。すると白血球のひとつであるマクロファージがやってきて掃除をするのですが、マクロファージはこのLDLを動脈壁内部に引き込んで消していくわけです。 ところが、このことで、LDLの残骸が蓄積して血管の通り道が狭くなり、動脈硬化が進行してしまうというわけ。
こういった中で、コレステロールへの認識は、「コレステロール=悪い」から「悪玉コレステロールが悪い」そしてさらには「酸化してしまった悪玉コレステロールが悪い」という風に変わってきました。
しかし、悪玉も完全に悪というわけではありません。
コレステロールは悪玉、善玉関係なく身体に必要なものです。
要はその総量が増えすぎたり、逆に減り過ぎたり、もしくは悪玉、善玉のバランスが悪くなると問題が起こるということなのですね^^。
やはりここでも最適なバランスや量というのが重要なのです。 コレステロールは細胞膜に存在すると前述しましたが、細胞膜の流動性を決定するのにも一役かっています。少なくなり過ぎても安定性がなくなり、多すぎると流動性がなくなるといったように・・・。
これもバランスですよね。
肝臓がうまくコレステロールの量を調整し、またコレステロールの代謝もうまくされていれば、コレステロールが過剰になることはありません。 また極端にコレステロールを控えたり、菜食をしなければ、コレステロールが足りなくなることもありません。
ちなみに・・・
コレステロールの供給源は、毎日の食事で摂るもの「食物由来のコレステロール(動物性食品にしか含まれない)」と「体内で合成されるコレステロール」の2つがあります。
肝臓で生産されるコレステロール量は食事で摂るコレステロール量によって変わりますが、一般に食事で摂取する量の約3倍に相当すると考えられています。 肝臓は、小腸から吸収されたコレステロールが血液中に運ばれると、それを察知して生産量を抑制します。逆に、外から入ってくるコレステロール量が少なくなると、今度は合成を促進します。
要は、体内で必要に応じて合成されているというわけなんです。
コレステロールが高いと言われた人が、コレステロールがない食事を摂っても、コレステロールが全然減らず、悪玉コレステロールが増えると言うことがあります。これは食べ物からのコレステロールが減ってしまうと、肝臓での合成量が増えるということが一つなのです。
逆にコレステロールを摂るようにすると総コレステロールが減り、善玉が増え、悪玉が減ると言ったようなこともあります。
不思議ですよね。これにはカラクリがあるのです^^。
小菅 一憲
カイロプラティカ麻布十番|副腎疲労専門カイロプラクティック