最近、「腸内環境」という言葉がよく聞かれるようになりました。

その背景には、慢性便秘 をはじめ、大腸の病気(大腸ポリープや大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病などの難治性炎症性腸疾病など)が増加の一途をたどっている状況があります。

つまり、日本人の腸内環境は悪化しているのですね。

腸の病気が増えてきたわけ

1960年以前の日本では、米 と 魚、野菜 を中心とした食生活が一般的でした。

しかし、1960年代半ばを境に、食卓には 肉 がならぶようになり、ヨーグルトなどの 乳製品 の摂取量が増える一方、米や野菜などの摂取量は減り、精製された食物を非常に多く摂るようになりました。

結果的に食物繊維摂取量が極端に減少したのです。

日本人の食物繊維の摂取量を1950年代と2004年とで比較すると、日本人の1日の食物繊維の平均摂取量は、約25g前後から13.9g へ減少しています。一方、脂肪の摂取量は、1日平均25g前後から55g 前後まで増加。とくに動物脂肪の摂取量が著しく増加しています。

日本人は戦前まで動物性食品をほとんどとることがなかったため、遺伝的にタンパク質分解能力が弱く、高タンパク質をとると腸内に未消化のタンパク質が残ります。未消化のタンパク質は腸内で異常発酵(腐敗)するため、人間にとって「毒」です。

腸の短い欧米人はそれを速やかに排出できますが、日本人は植物性食品を消化するのに適した長い腸をしているため、それだけ長い時間、腸内に腐敗産物がとどまることになります。よって、肉や脂肪分をとる量が多く、便秘がちになる人ほど、大腸ガンになる確率も高くなるのです。食べているうちに体質も変わってくるよと楽観的な見方をする人もいますが、オーストラリアでの皮膚ガンの増加の例にあったように、残念ながら人の体はそう簡単に適応できるものではありません。

このような食生活の欧米化によって、1980年以降は腸の病気が増えてきた といっても過言ではないでしょう。

粗質物の摂取量の減少

カイロプラクティックの中でも、大腸機能不全に関与する疾病は、食生活の変化に伴い、今世紀から急速に増加していると述べています。

そしてその原因とは・・・

1.砂糖や小麦粉などの精製された炭水化物使用量の増加 2.粗質物の摂取量の減少

である、と断言しています。

こんな話もあります。

大腸に関わる疾病は、主に 産業化された地域や家 でみられるというのです。 これらの疾病は、とくに1870年に穀類の粉砕が石臼から製粉機に移行し始めてから現われており、虫垂炎は、1880年以降まではあまり一般的ではなく、憩室性疾患は、1920年代まで主要な疾患ではなかったというのです。痔や大腸・直腸における腫瘍は、精製した炭水化物を消費する国で最も一般的な病気でもあるというデータもあります。

これらに共通するものはなんでしょう。

そう。食べ物の精製 なのです。

流行病の研究では、伝統的な食生活を続けているアフリカの部族には、大腸機能不全の疾病の発病率は低いことが確認されています。 これらの民族が摂取する食べ物は、繊維質の割合が高く、精製炭水化物の割合は低いのです。 しかし、もしこの民族の人たちがイギリスやアメリカなどに移住し食生活を変化させると、イギリス人やアメリカ人と同様、大腸機能不全による疾病にかかる割合が高くなると言われています。

このことは驚かれることだと思いますが、今日本人が抱えている「腸内環境」の悪化を改善させるヒントが隠されていると思いませんか?

もちろん、腸内環境を悪化させているのは、食生活の変化ばかりではありません。ライフスタイルの変化も大きな原因のひとつですね。 たとえば、クルマ社会の進展による 運動不足や、増大する 残業時間、外食 の増加、加工食品 の普及など、50年前にくらべるとその生活環境の変化は驚くべきものと言えます。

前にも述べましたが、私が臨床に出ていても、消化器の問題で悩んでいる人は増えているというのが正直な感想です。 便秘や腹部膨満感、慢性的な軟便・下痢など腸の不調は本当に多く、対処的な薬の使用に頼ったり、もうあきらめてその状態を放置し、慢性的になってしまっている人もいます。 薬は対処療法に過ぎないということ、そして腸の状態を不健康のまま放置するということがどれだけ身体に悪影響があるかということは、いままでこのblogを読んで頂いた方にはよくわかって頂けると思います。

これらの腸の改善には、セルフ・メディケーションが欠かせません。 つまり、腸の機能を完全回復する方法は、まさに 日々の食生活の改良やライフスタイルの改善 が、非常に重要になってくると言えるのです。

小菅 一憲

カイロプラティカ麻布十番|副腎疲労専門カイロプラクティック

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